5〜19名規模のシステム受託開発会社では、営業・提案・そして時にはプロジェクトマネジメントまで、社長が一人で担っているケースが非常に多くあります。「自分が動かないと案件が取れない」「受注したら、自分が現場に入るしかない」——もし心当たりがあるなら、まずお伝えしたいのは、それは社長個人の能力や努力の問題ではなく、受託開発業界の構造的な問題だということです。
本コラムでは、この「案件が途切れる悪循環」がなぜ生まれるのかを整理し、断ち切るための現実的な選択肢を比較します。
なぜ、営業も提案も社長に集中するのか
理由はシンプルで、システム開発の提案活動ができる人材が、極めて希少だからです。
受託開発の提案には、技術への深い理解に加えて、顧客の業務や経営課題を聞き出すヒアリング力、課題を整理して道筋を示す構造化の力、それを提案書に落とし込み、決裁者の前で語りきる力——という複合的なスキルが求められます。
この条件を満たす人材は労働市場にほとんど出てきません。採用は難しく、報酬水準も高い。社内で育てようにも、エンジニアは良くも悪くも「職人気質」であることが多く、技術の話はできても、顧客の本質的な課題に踏み込む提案は苦手——というケースが少なくありません。育成には年単位の時間がかかります。
結果として、「一番できる人」である社長が、営業も提案もやり続けることになるのです。
「受注したら社長がPMへ」——そこから悪循環が始まる
問題は、受注した後に起こります。多くの会社で、社長はそのままプロジェクトマネージャーとして現場に入ります。すると、次のようなサイクルが回り始めます。
案件が途切れる悪循環
- 1社長が営業・提案を一人で担う
- 2受注すると、社長がPMとして現場に入る
- 3プロジェクトの間、営業活動が止まる
- 4納品する頃には次の案件がなく、資金繰りが苦しくなる——そして1に戻る
さらに深刻なのは、この構造が引き起こす二次的な問題です。社長の業務過多は、健康リスクはもちろん、プロジェクト管理の品質低下、問題発生時の対応の遅れ、組織運営や人材育成の停滞につながります。「社長が頑張るほど、会社の未来に使う時間がなくなる」——これがこの悪循環の本当の怖さです。
悪循環を断ち切る、3つの現実的な選択肢
構造の問題は、構造で解決するしかありません。核心は「提案活動を社長以外が担える体制を作る」こと。現実的な選択肢は3つあります。
選択肢1:営業・提案人材を採用する
根本的な解決になり得ますが、前述のとおり提案ができる人材は希少で、採用の難易度・コストともに高いのが実情です。仮に採用できても、自社の技術やドメインを理解して戦力になるまでには時間がかかります。体力のある会社向けの、中長期の打ち手と言えます。
選択肢2:営業代行・提案書作成を外注する
動き出しが早いのがメリットです。ただし、費用が先に発生するため、受注できるか分からない案件に外注費をかけるという判断を迫られます。また、一般的な営業代行はシステム開発の技術的な文脈に必ずしも強くなく、ヒアリングから提案書、クロージングまでを一気通貫で任せられるかは見極めが必要です。
選択肢3:提案活動人材の「無償提供」を受ける
近年は、提案活動(ヒアリング・課題整理・提案書作成・プレゼン・クロージング)を担う人材を無償で受け入れられる仕組みも登場しています。費用が発生するのは受注後にプロジェクトマネジメントを依頼する場合のみ、という成り立ちのため、先行投資のリスクがありません。「マネタイズが確定していない案件に費用はかけられない」という受託開発会社の事情に合わせて設計されたモデルです。
それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
| 選択肢 | 先行費用 | 立ち上がり | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 採用 | 大(人件費) | 遅い | 希少人材で採用難。育成に年単位 |
| 外注(営業代行等) | 中(前払い) | 早い | 受注前に費用が発生。技術文脈への強さは要見極め |
| 提案人材の無償提供 | なし | 早い | 費用は受注後のPM依頼時のみ。提供元の提案品質が鍵 |
大切なのは、社長の時間を「社長にしかできない仕事」へ戻すこと
経営判断、組織づくり、社員の育成、重要顧客との関係構築——これらは社長にしかできない仕事です。提案活動は重要な仕事ですが、「社長にしかできない仕事」である必要はありません。
悪循環の中にいると、「自分がもっと頑張れば」と考えがちです。しかし出口は逆方向にあります。提案活動を任せられる体制を作り、社長の時間を未来に向けること。それが、案件が途切れない会社への第一歩です。