提案書の構成(目次の順番)は、資料を作り始める前に、骨子(アウトライン)で決めます。これがこの記事の結論です。

提案書(提案資料)を作ろうとして、まずパワーポイントを開く。テンプレートの1枚目から埋め始め、金曜に着手して月曜に見返すと、どうも順番がしっくりこない。スライドを並べ替えては作り直す——骨子を作らずに資料から作り始める方は、意外と多いのです。

私は提案書のレビューで、中身を見る前にまず一つ聞きます。「このスライドで、お客さんにどう思ってもらいたいの?」。「ここで何を説明するの?」ではありません。この問いに答えられるかどうかは、中身の出来より何倍も大事だと考えています。答えがあれば、資料が多少分かりにくくても説明できるからです。そして、その答えを考えるのは、パワーポイントを開いてからではなく、骨子の段階です。

先日、ある勉強会の資料を作ったときは、骨子に全体の8割ほどの時間を使いました。中身の作成は、出来上がった骨子を資料に起こすだけ。骨子がなければ資料は作れない、というより、骨子ができていれば、資料はもう出来ているのです。

提案書の中身の書き方(事実と解釈の分け方)は説得力のある提案書の書き方——「解釈」を抜き、「事実」で書くに、誰に渡すか(決裁者に届く上申用の1枚)は社内稟議を通す提案書の書き方——担当者は前向きなのに決裁が下りない理由に、骨子の材料になる顧客の前提条件のまとめ方は与件整理とは?要件定義との違い、7項目のテンプレートと進め方に書きました。この記事で扱うのは、その手前にある「順番と構成」だけです。

提案書の構成が決まらない、たった一つの理由

骨子(アウトライン)とは——提案書の基本の流れ(構成の型)

骨子とは、資料を作る前に決める大枠の流れのことです。大手コンサル会社では「骨子」と呼ばれることが多く、アウトライン、ストーリー、シナリオ、目次案——呼び方は何でも構いません。提案資料の骨子の一般的な型は、こうです。

資料の目的 → 問題の定義(現状と課題)→ 目標 → 原因 → 対策(解決策)→ 比較検討 → まとめ

私はこの型に、「はじめに」と「想定問答(想定される質問と回答)」の2項目を足して使っています。どこに足すか、なぜ足すかは後述の記載例で示しますが、先に言っておくと、型は出発点にすぎません。この型どおりに並べただけの提案書と、聞き手に合わせて順番を動かした提案書は、まったく別物になります。

私は、資料の作成前には必ずと言っていいほど骨子を作ります。慣れた領域では省くこともありますが、初めて対応する業界や初めての種類の仕事、研修資料はほぼ間違いなく作る。メモ帳に書く程度の粗さで十分で、パワーポイントはまだ開きません。

提案書の順番は「説明の論理」ではなく「聞き手の疑問が消える順」で決める

提案書の構成が決まらない理由は、一つです。順番を「自分が説明したい順」で決めているから。骨子を作らずにスライドから埋め始めると、自然とこの順番になります。骨子を作っていても、「何を説明するか」の順に並べていれば同じです。

聞き手は、席に着いた瞬間から何かを思っています。期待しているのか、身構えているのか、面倒だと思っているのか。「難しいことを言われるのでは」「非現実的な提案をされるのでは」という不安を抱えて座っている方も少なくありません。その疑問や不安が解消されていく順番に並んでいない提案書は、どれだけ中身が正しくても届きません。不安が残ったまま次のページを見ると、その不安が邪魔をして、話が入ってこないからです。

私の骨子の作り方は、3つの問いでできています。①聞き手が何を知りたいか。②それをどの順番で聞きたいか。③その順番で話したとき、ページごとに聞き手の反応や表情が思い浮かぶか。③まで揃って、骨子は完成です。そこから資料作成に入ります。

内容が正しければ伝わる、というわけではありません。話す順番と、相手の感情への寄り添いがないと、正しいことでも伝わらない。骨子は、そのための道具です。基本のキで、スポーツで言えば基礎練のように地味なので、どうしてもサボりたくなる。ただ、私個人の感覚では、骨子を作らずに資料を作るほうがよほど心配ですし、時間もかかります。

提案書の骨子(アウトライン)の作り方① 聞き手が「次に何を思うか」の順に並べる

提案書の構成は、提案が終わったときの相手の状態から逆算して決める

資料に手を付ける前に、まず「提案が終わったとき、相手にどういう状態・気持ちになっていてほしいか」を1行で決めます。「目的を理解してもらう」といったロジカルな到達点ではなく、「それなら任せたい」「これなら社内を通せる」「早く進めたい」という、気持ちの言葉で書きます。私は提案終了時の相手の感情のゴールを先に決め、そこに向かってページごとのゴールを決めていきます。

その前提として、読み手を1人に決めておきます。読み手が変われば、知りたい順番も、終わったときの気持ちのゴールも変わるからです(読み手を決裁者に置く考え方は提案力を高める3つの視点——決裁者に刺さる提案は何が違うのかに書きました)。

聞き手が一番気にしていることを、最初のページで結論づける——「はじめに」の役割

納期を気にしている顧客には、1ページ目で「◯月までに間に合わせることを最優先にした提案です」と結論づけます。実績ばかり気にしている顧客には、最後に載せがちな実績集を最初に持ってきます。スケジュールは後ろ、実績は最後——という定番の順番より、不安を残したまま聞かせないことを優先するのです。「間に合うのかな」と思いながら間のページを見ていても、そればかりが気になって、話は入ってきません。

相手が何を一番気にしているかは、ヒアリングで何度も繰り返された言葉、眉間にしわが寄ったタイミング、声のトーンが下がったタイミングから拾います(引き出し方は提案ヒアリングのコツ3つ——顧客の課題を聞き出し「特にご要望はありません」で終わらせないに書きました)。「はじめに」のページの役割は、その一番の関心に最初に答えて、「この人たちは、私たちのことを分かってくれている」と思ってもらうことです。

提案書の目次は、前のページを見た相手が「次に何を知りたくなるか」の連鎖で並べる

「はじめに」の次は、一番の心配に答えたあとに残る疑問に答えるページです。初めて提案する顧客なら、それは「そもそも、なぜこの会社が来たのか」なので、「はじめに」の直後に「ご提案に至った経緯」を置く。稟議の再提出なら「前回と何が違うのか」なので、「前回からの変更点」を置く。型の1行目が「資料の目的」だからといって、そこから始める必要はありません。

以降のページは、「前のページを見た相手が、次に何を知りたくなるか」→「次のページでそれに答える」の連鎖で作ります。課題が整理されたら「じゃあ何から手をつける?」と思う。対策が並んだら「で、どれをやる?」と思う。その疑問に次のページが答える。骨子の各行には、「何を説明するか」ではなく「ここで相手にどう思ってもらいたいか」を1行で書きます。書けないページは、要らないか、位置が違います。

検証の仕方は決まっています。骨子を上から順に、声に出すつもりで読む。最後まで「そうそう、そう」が途切れず、疑問が一度も残らない状態でゴールに着けるか。着けなければ、順番か項目を組み替えます。

提案書の骨子の作り方② 想定問答(想定される質問と回答)を骨子の項目に入れる

想定問答は骨子の1項目として最初から置く——「後出しジャンケン」をなくし、手前のページに答えを仕込む

「想定される質問と回答」は、資料が完成したあとに1枚付け足すものではありません。骨子の1項目として、最初から置きます。理由は二つあります。一つは、指摘されてから答えると、同じ答えでも「言われたから今、取り繕っているよね」と見えるからです。営業としての印象は、とても悪くなります。逆に、最初から書いてあれば「ちゃんと考えてきてくれた」に変わる。中身が同じでも、置いてある場所で評価が逆転するのです。私はこれを「後出しジャンケンをなくす」と呼んでいます。もう一つは、骨子の段階で「ここで必ず聞かれる」と分かっていれば、その答えを想定問答のページだけでなく、手前のページに仕込めるからです。後述の記載例では、一番の心配「現場が使えるのか」への結論を「はじめに」に上げ、想定問答のページでは操作の流れで裏付ける形にしています。資料ができてから1枚足すやり方では、この組み替えは手戻りになります。

想定問答はトップ3を挙げ、それぞれに回答を用意する

作り方は、骨子を読み手の目で読み返して、不安や不満が出そうな箇所を探すことです。ネガティブな反応を先に想定し、トップ3くらいに絞って、それぞれに回答を用意する。「こういうことをご心配される方もいると思うのですが」と、言われる前に答えます。システム開発の提案であれば、たとえば「本当に現場が使えるのか」「結局いくらか」「なぜ御社なのか」あたりが候補になるでしょう。

言いづらいこと——弱点や、答えにくい質問——を骨子から外すのは簡単です。ですが、それは遠慮です。どう伝えれば伝わるかを設計して骨子に入れるのが配慮で、伝えないことより何十倍も価値があります(遠慮と配慮の区別は提案ヒアリングのコツ3つのコツ③で「聞く場面」について書きましたが、骨子から項目を外す判断にもそのまま当てはまります)。

時間の制約で考え切れていない点があるなら、それも隠しません。想定問答の行の末尾に「本日相談させていただきたい点」として置き、提案の冒頭で自分から言う。当日の宣言の仕方はシステム開発の概算見積もりの出し方のコツ③に書いたとおりですが、この記事で言いたいのは、その「相談したい点」を骨子のどこに置くか、という位置の話です。想定問答の行に固定しておくと、抜けません。

提案書の骨子の作り方③ 対策の洗い出しと比較の軸まで骨子で決め、資料は「起こすだけ」にする

対策の洗い出し(MECE)は、「他に手はないの?」に答えるために骨子で済ませる

私は資料を作る前に、メモ帳の骨子の上で大まかな内容まで整理してしまいます。対策の洗い出し(MECE)や、評価軸(QCDなど)での比較も、「ここにはこういうことを書く」まで骨子で決める。資料を作りながら考えるのは難しく、資料にしてから整理し直すと手戻りになるからです。

対策のページで聞き手が次に思うのは、「他に手はないの?」です。だから対策は、やる・やらないは置いて、取り得る手を全部並べます。「この中のどれかを選べばいい」と思える状態を骨子で作る。思いついた対策だけを並べると、「他にもいい方法があるかもしれない」という状態のまま、何千万円の投資を決めさせることになります。なお、概算見積もりの記事で書いた松竹梅は、選んだ対策の中でスコープを3段に分ける話でした。ここで言う洗い出しは、その一つ手前です。

比較の軸(QCDなど)は顧客の言葉に言い換え、「軸の意味を合わせる行」を骨子に置く

対策を比較するとき、私は「QCDで評価しました」とは言いません。顧客には伝わらないからです。「現場の操作負担」「初期費用」「立ち上がりまでの期間」のように、その案件の顧客の言葉に言い換えます。そして、それぞれの軸が何を意味するか——何をもって「操作負担が軽い」と言うのか——を顧客と認識合わせする行を、骨子に置きます。軸の意味が合っていないまま比較表を出しても、読み手はどの列をどう読めばいいか分かりません。記載例では比較表の一つ前に置いていますが、この認識合わせをどこに置くかも、骨子の段階で決めておくものです。

本編に載せない判断を、骨子の段階に前倒しする

骨子では、「本編に入れない項目」も決めます。画面一覧、機能の詳細、体制表——稟議の記事で書いた3層構造で言えば、「詳細版」に回すものを、資料化の前に骨子の段階で切っておく。提案の場で「何これ?」という混乱を招く情報は、議論を要件の細部に逸らし、契約の話まで進まなくなります。要件定義で話すことは、提案では出さない。場にふさわしい粒度を、骨子で切るのです。

ここまでできたら、資料に起こします。一つ留保を添えると、骨子は必ず正解というわけではありません。資料に起こす過程で別のアイデアが浮かび、「もっとこうしたほうがいい」と直すのは悪いことではない。私自身、研修資料では骨子で長く悩むことがあります。悩む場所が資料ではなく骨子だ、というだけの話です。

提案書の構成・目次の記載例(システム開発・架空の案件)——型に想定問答と各ページのゴールを添える

骨子の書き方を、架空の案件で示します。各行は、項目名の下に4つの要素を固定して書きます——開く前に相手が思っていること/このページのゴール(読み終えた気持ち)/中身(そのページに書くこと)/次に湧く疑問(次の行が答える)。この4つが全行で埋まり、最後の行で「次に湧く疑問」が「なし」になれば、骨子は完成です。

提案書の構成・目次の記載例

自動車整備工場チェーン(5拠点)の入庫予約・作業進捗管理システムのご提案/架空の例です。項目・数値は案件ごとに置き直してください。

■ 前提

  • ・読み手:社長(決裁者)
  • ・ヒアリングで繰り返された言葉:「電話で整備士の手が止まる」
  • ・一番の心配:「整備士は機械が苦手で、使ってもらえるか」
  • ・提案終了時のゴール:「整備士の手を止めずに済む。この人たちに任せて、今日決めていい」

■ 骨子(各行=1ページ)

0. はじめに

  • ・開く前に思っていること:「何を言われるのだろう。難しい話では」
  • ・このページのゴール:「こちらの一番の心配を、分かってくれている」
  • ・中身:今回の提案は、整備士が電話を取らなくて済む状態を◯か月で作ることを最優先にし、整備士の操作は「開始」「完了」の2ボタンだけにしている、と1ページ目で結論づける
  • ・→次に湧く疑問:「今日は何を決めればいいのか」

1. 資料の目的

  • ・開く前に思っていること:「今日は何を決めればいいのか」
  • ・このページのゴール:「決めることが1つに絞られていて、楽だ」
  • ・中身:本日決めていただきたいこと(全拠点一斉ではなく、まず1拠点での先行導入の可否)を1行で
  • ・→次に湧く疑問:「で、うちの何が問題なのか」

2. 問題の定義(現状と課題)

  • ・開く前に思っていること:「うちの何が問題なのか」
  • ・このページのゴール:「そうそう、それで困っている。話を聞いてくれていた」
  • ・中身:電話予約が1拠点1日30件、1件あたり整備士の手が止まる時間3分=1拠点1日90分。拠点ごとに紙の予約台帳、二重登録が月◯件。理想とのギャップを事実で書く(書き方は事実と解釈の記事)
  • ・→次に湧く疑問:「それが解決したら、どうなるのか」

3. 目標

  • ・開く前に思っていること:「解決したら、どうなるのか」
  • ・このページのゴール:「到達点が具体的で、想像できる」
  • ・中身:◯月までに電話受付を整備士の手から外す/二重登録ゼロ/予約状況と作業進捗を、拠点をまたいで誰でもその場で把握できる状態
  • ・→次に湧く疑問:「でも、なぜ今そうなっているのか」

4. 原因

  • ・開く前に思っていること:「なぜ今そうなっているのか」
  • ・このページのゴール:「なるほど、だからか」
  • ・中身:拠点ごとの紙台帳、予約と進捗が別管理、窓口が電話しかない
  • ・→次に湧く疑問:「じゃあ、どうする?他に手はないのか」

5. 対策(取り得る手をすべて並べる)

  • ・開く前に思っていること:「どうする?他に手はないのか」
  • ・このページのゴール:「他に手はない。この中のどれか、ということか」
  • ・中身:現行運用の手直し(受付を事務に集約)/受付業務の外注/既製の予約サービス導入/専用システムの開発/既製サービスと専用開発の併用。やる・やらないは置いて、全部出す
  • ・→次に湧く疑問:「で、どれがいいのか。何で比べるのか」

6a. 評価軸の確認

  • ・開く前に思っていること:「何で比べるのか」
  • ・このページのゴール:「自分の物差しで比べてもらえる」
  • ・中身:整備士の操作負担/初期費用/立ち上がりまでの期間、の3軸を示し(QCDを顧客の言葉に言い換えた軸)、それぞれが何を指すか(何をもって「操作負担が軽い」とするか、など)を社長と認識合わせする。優先順位はヒアリングから操作負担が最優先と仮置き済みで、違えば6bの表をどの列で見るかをその場で切り替える
  • ・→次に湧く疑問:「その軸で見ると、どれがいいのか」

6b. 比較検討

  • ・開く前に思っていること:「その軸で見ると、どれがいいのか」
  • ・このページのゴール:「納得して、自分で選んだ」
  • ・中身:5案を3軸で○△×で並べ、推奨案とその理由
  • ・→次に湧く疑問:「本当に現場が使えるのか。繁忙期は大丈夫か。いくらか」

7. 想定問答(トップ3)+本日相談したい点

  • ・開く前に思っていること:「現場が使えるのか。繁忙期は。いくらか」
  • ・このページのゴール:「聞こうと思っていたことが先に書いてある。ちゃんと考えてきてくれた」
  • ・中身:Q1 整備士が使いこなせるか→「はじめに」で触れた2ボタンの画面構成を、操作の流れで示す。Q2 車検の繁忙期に切り替えて大丈夫か→閑散期に導入し、紙台帳と2週間の並行運用。Q3 結局いくらか→前提条件付きの概算を提示(概算見積もりの記事)。末尾に「各拠点の既存機器との連携は、本日相談させてください」と自分から書く
  • ・→次に湧く疑問:「それなら、決めて大丈夫か」

8. まとめ

  • ・開く前に思っていること:「決めて大丈夫か」
  • ・このページのゴール:「今日決めていい」(=提案終了時のゴール)
  • ・中身:決めていただきたいこと(1拠点での先行導入の可否)の再掲、次の一歩と日付
  • ・→次に湧く疑問:なし(疑問が残っていない状態)

■ 型から動かした箇所

  • ・型どおりなら想定問答(7)で初めて答える「現場が使えるのか」を、この案件では一番の心配なので「はじめに」(0)で先に結論づけ、7のQ1では操作の流れで裏付ける形にした
  • ・比較検討(6)を、軸の合意(6a)と比較表(6b)の2ページに分けた

■ 本編に載せないもの(別添に回す)

  • ・画面一覧、機能の詳細、体制表、スケジュールの日単位の内訳

■ 完成の確認

  • ・0〜8を上から声に出して読み、各行の「思っていること」が本当にそう思いそうか、最後の行でうなずく社長の顔が具体的に浮かぶか。浮かばなければ順番か項目を組み替える

読み手が変われば、この骨子は変わります。同じ案件で読み手が現場の担当者なら、「はじめに」のゴールは「自分の仕事が楽になる」に、想定問答は「社内でどう説明すればいいか」に変わり、社長に向けた「今日決めていい」は最後の行から消えます。数値や項目は案件ごとに置き直すものですが、この骨子の各行を埋めることに、提案書作りの中で一番時間をかけて構いません。ここが埋まれば、あとは起こすだけです。

まとめ:提案書の骨子を資料に起こす前の5つのチェック

骨子に時間をかける理由をもう一度書きます。骨子ができていれば中身は起こすだけで、骨子がないまま作った資料は、途中で並べ替えと作り直しが起きる。私が提案書のレビューで、中身の説明より先に「このスライドで、お客さんにどう思ってもらいたいの?」と聞くのも、同じ理由です。この問いで答えに詰まるなら、直すべきは中身ではなく構成の側です。

提案書の骨子チェック

  1. 1読み手を1人に決め、提案終了時に「どう思っていてほしいか」を気持ちの言葉で1行書いたか
  2. 2聞き手が一番気にしていることが、最初のページで結論づけられているか
  3. 3各ページに「ここでどう思ってもらいたいか」と「次に湧く疑問」を1行で書き、上から声に出して読んでページごとに相手の反応や表情が浮かんだか。書けない行・浮かばない行は削るか、位置を変えたか
  4. 4想定問答(トップ3)が骨子の項目として入っているか。相談したい点をその行の末尾に置いたか
  5. 5対策は取り得る手を全部並べ、比較の軸は顧客の言葉で書いて「意味を合わせる行」を置いたか。本編に載せないものを骨子に書き出したか

骨子作りは、まだ目の前にいない聞き手を想像する作業です。見えないお客さんに対して準備をする感覚がある人は、提案がうまいことが多い。私は重要な電話——謝罪や込み入った報告——の前にも、何を説明し、最後に何を伝え、どう思ってもらいたいかをメモ帳に書いてからかけることがあります。いつでもではなく、3分の1ほどですが、新人時代から続けている習慣です。やり方というより、相手にちゃんと伝えたいという気持ちの結果として続いています。

骨子の中身を事実で書く方法は説得力のある提案書の書き方に、出来上がった提案書を決裁者に届ける方法は社内稟議を通す提案書の書き方に書きました。次の提案書は、パワーポイントを開く前に、メモ帳に9行——型の7項目に「はじめに」と「想定問答」を足したもの——を書いてみてください。肌に合えば、資料の作り方が変わるはずです。

よくある質問

提案書の構成はどの順番で組めばよいですか

「自分が説明したい順」ではなく、「聞き手が次に何を思うか」の順です。まず提案が終わったときに相手にどう思っていてほしいかを決め、聞き手が席に着いた瞬間の疑問や不安から出発して、その疑問が一つずつ解消されていく順にページを並べます。上から順に話したとき、ページごとに聞き手の反応や表情が思い浮かぶ状態になって初めて、構成は完成です。

提案書の骨子とアウトラインは何が違いますか

同じものです。大手コンサル会社ではアウトラインを「骨子」と呼ぶことが多く、意味は大枠・シナリオ・大まかな流れです。大事なのは呼び方ではなく、資料を作り始める前にメモ帳に書き、そこに時間の大半をかけることです。骨子ができていれば、資料はそれを起こすだけになります。

提案書の目次にはどんな項目を入れればよいですか

一般的な型は「資料の目的→問題の定義→目標→原因→対策→比較検討→まとめ」です。私はこれに、聞き手の一番の関心を最初に結論づける「はじめに」と、「想定問答(想定される質問と回答)」の2項目を足します。ただし型は出発点にすぎません。納期を気にしている相手には1ページ目で納期に触れ、実績を気にしている相手には実績を最初に持ってくるなど、読み手の関心に合わせて順番を動かしてください。記事中の記載例に、各項目に「開く前に思っていること」「このページのゴール」「次に湧く疑問」を添えた形を載せています。

提案書は骨子を作らずにスライドから作ってはいけませんか

私の経験では、骨子を飛ばしたほうが時間がかかります。資料を作りながら順番や聞き手の反応を考えるのは難しく、途中で並べ替えや作り直しが起きるからです。聞き手が何を思うかの想像は、メモ帳の骨子の上だけで完結します。慣れた領域なら省くこともありますが、初めての業界や初めての種類の提案では、まず骨子から作ることをおすすめします(私も、そうした案件や研修資料では、ほぼ間違いなく作ります)。

提案書に想定問答(想定される質問と回答)を入れると、弱点をさらすことになりませんか

逆です。指摘されてから答えると「言われたから取り繕っている」と見られ、営業としての印象はとても悪くなります。最初から書いてあれば「ちゃんと考えてきてくれた」に変わります。言いづらいことを骨子から外すのは遠慮です。どう伝えれば伝わるかを設計して入れるのが配慮で、信頼につながります。

提案書の流れは、目的→課題→対策の型どおりでないといけませんか

いけなくはありません。型は、聞き手の疑問がおおむねこの順に湧くから存在するものであって、守ること自体が目的ではないからです。骨子に唯一の正解はなく、相手の関心が納期なら納期を、実績なら実績を先に置きます。判断基準は一つで、その順番で話したときに聞き手の顔が浮かぶかどうかです。資料に起こす過程で別の順番を思いついて直すのも、悪いことではありません。

提案書の構成は何ページくらいにまとめればよいですか

ページ数の目安は、骨子の行数です。骨子の1行が1ページに対応するので、聞き手の疑問が解消される順に並べた行数が、そのまま本編のページ数になります。画面一覧・機能の詳細・体制表のように、本編で聞き手を混乱させる情報は別添に回します。この「載せない判断」を資料ではなく骨子の段階で済ませると、本編は自然に短くなります。